
家を建てることになったけれど…。
やっぱり、「和室」が1部屋欲しい!
でも、独立した和室にするか、リビング続きにするか…。
家を建てる。その大きな買い物のとき、多くの人が頭を悩ませるのは、やはり「間取り」ではないでしょうか。暮らしやすさ、家の使い勝手の良さは、「間取り」が重要なウェイトをしめます。
さて、田舎暮らしの我が家。土地の値段も都会に比べるととても安く、私たちのような若輩の夫婦にも、戸建ての家を持つことができました。私たち夫婦が家を建てるときにこだわったところは、
- オーダーメイドの注文住宅ではなく、規格住宅で建てたい
- 和室を独立にせず、リビング続きの和室にしたい
- 玄関にニッチ棚を作りたい
など、いろいろありました。その中でも「リビング続きの和室」については、10年以上暮らしてみて、

「和室」というスペースを、独立した個室ではなくリビング続きにしたことは、今でも大満足!
と感じています。
リビング続きの和室には、生活していくうえでさまざまメリットがありました。その中でも特筆すべきは、リビング続きの和室が、家族のライフステージの変化に対応できるということです。
今回は、我が家のライフステージの変化の実例をあげながら、リビング続きの和室がどのように形を変えていったのか、そのメリットも合わせてまとめていきたいと思います。
リビング続きの和室は、ベビーケアがしやすい
私たちの家が完成したのは、10年以上前、娘が生まれた直後です。
娘の誕生、初めての育児
引っ越しと同時に始まった、初めての育児。おむつ、ミルク、抱っこ、沐浴…赤ちゃんのお世話は、昼夜を問わず続きます。低出生体重児で生まれた娘は、か細い体で母乳の飲める量も少なく、授乳やミルクのはき戻しも頻回でした。
引っ越し荷物の片付けもままならないまま始まった、てんてこまいの育児。そんなときに便利だったのが「リビング続きの和室」です。
引っ越し直後、まず最初の使い道は、
- 娘の退院に合わせて、実家から手伝いに来てくれた私の母の宿泊部屋
- 荷ほどきの終わらない引っ越し荷物の仮置き
でした。リビング続きだったことで、「仮置きした引っ越し荷物を片付けること」と「娘のお世話をすること」が同時にしやすく、負担が少なくすみました。
荷物の仮置き場があることで、必死で片付けなくてもリビングダイニングは快適だったことも、産後の私にとってはありがたいことでした。
引っ越し荷物も片付けのめどがついて、どうにか生活が形になり、実家の母が帰った後の和室は、
- ベビーベッドを置いて、娘のお世話・お昼寝の部屋
になりました。
リビング続きだったことで、料理やせんたく物干しなどの家事をしながら娘を見ていることができます。これは、リビング続きの和室のすばらしいメリットです。娘がお昼寝をしているときには、私も布団を敷いて体を休めることもできます。
たまに来客があるときや夫婦でワインでも飲むときには、ふすまを閉めてしまえば、おむつやら洗濯物やら雑多なモノが目に入らなくなることも、本当に便利でした。
風邪などの感染症での看病
娘がたまに軽い風邪などをひいてしまったときの看病にも、リビング続きの和室は重宝です。
風邪薬を飲んで眠っている娘を、障子を閉めて静かに寝かせて、様子をうかがいながら家事もできます。氷枕や予備のタオル、飲み物などを取りに行くにも、リビング続きの和室に寝かせていればすぐに行けます。
リビング続きの和室は、介護のお世話がしやすい
娘が2歳になった直後、介護が必要な夫の祖母を引き取り、同居することになりました。
家を建てたときには想像もしていなかった、ダブルケア生活。そんなときに私たち家族を支えてくれたのも、「リビング続きの和室」という間取りです。

突然始まった、いわゆるダブルケアの介護生活
骨折をして我が家にやってきた夫の祖母は、もともと目がほとんど見えない視覚障害も抱えていて、常時介護・介助が必要な状態でした。トイレに行くとき、食事のとき、着替えのとき、服薬のとき…とにかく「呼ばれる」という、緊張感のある生活です。
その時に便利だったのが、「リビング続きの和室」です。和室の使い道は、
- レンタルの介護用ベッドを置いて、夫の祖母の居室に
というものです。
これなら祖母の様子がキッチンからもよく見え、呼ばれたときにすぐに行ってお世話ができます。呼ばれていなくても、転倒しそうだったりする危ないときには、すぐに気がついて付き添ってあげることもできました。
高齢者にとって、孤独を感じにくい居室
リビング続きの和室がもう1つ良かったことは、「祖母が孤独を感じにくい」ことです。
80年以上住み慣れた土地を離れ、我が家に移り住んできた夫の祖母。幼なじみの友達や近所の人たちとも会えなくなり、気軽に買い物にも出られなくなりました。目が見えないなりに、モノの定位置を覚えながら何でも自分でやっていたこれまでの生活も、すべて失くしてしまいました。
私は慣れない介護生活を本当につらく負担に感じていましたが、一方で慣れない家に越してきた夫の祖母が可哀そうでたまりませんでした。
それでも「リビング続きの和室」が彼女の居室だったから、夫の祖母が孤独に部屋に閉じこもることはありませんでした。
いつも隣にひ孫(娘)の笑い声が聞こえ、あたたかくて日当たりのよい部屋での生活。呼べばすぐに、孫の嫁が来る生活。夫の祖母はいつも、「私ほど幸せな人間はなかなかいないわ」と、私たち夫婦に感謝してくれていました。
リビング続きの和室は、発達凸凹姉弟の療育にも
ダブルケアの介護生活が5年続いたのち、我が家に息子が生まれました。可愛い跡取りのひ孫の健やかな成長のためにと、夫の祖母はホームへの入居を了承してくれて、赤ちゃんのいる生活が始まりました。

介護の卒業と、息子の誕生
赤ん坊だった息子の世話をしながら、家事もして、娘の宿題に付き添って、ホームの夫の祖母の用事に行って…娘の赤ちゃん時代とはまた違った、赤ちゃんのいる生活が始まりました。
特別支援学級に通う娘は、日々の生活の療育的な対応も必要で、弟が生まれたからといって放っておける状況でもありません。
そんなときに「リビング続きの和室」という、リビングダイニングのほかに「ゆとりの1部屋がある」という間取りは、日々の生活を快適にしてくれました。和室の使い道は、
- ベビーベッドを置いて、息子のお世話・お昼寝の部屋・遊び部屋
です。
おむつや肌着などの散らかる赤ちゃん用品も、あふれる室内干しの洗濯物も、すべてリビング続きの和室の中で完結できます。娘は「赤ちゃんの場所が必要だから」などと別室に追いやられることもなく、リビングダイニングに置いていた学習机で、今まで通りに「リビング学習」を続けることができます。

あっという間に寝返りを覚え、ハイハイも覚えて活発だった息子を遊ばせるのにも、リビング続きの和室は重宝でした。ベビーフェンスで和室とリビングの境をきっちり区切り、和室の中に息子のスペースを限定することで、娘のエリアと息子のエリアをきっちり分離できます。これにより視覚的構造化ができ、発達凸凹の娘にとっても過ごしやすい空間を保てます。
発達凸凹姉弟の、生活スキルの練習の部屋へ
娘はADHD&自閉症スペクトラムを抱えていましたが、2歳になった息子の方も、発達障がい疑いで療育中になってしまいました。通常よりもたくさんの配慮が必要な、発達凸凹な我が子たちの育児。そんな生活にも、リビング続きの和室はとても便利です。
不器用な娘は小学校高学年になっても、自分の衣服の管理もまだまだおぼつかないところがあります。リビング続きの和室の押し入れを、ファミリークローゼット機能として使うことで、そんな娘と一緒に衣服の管理の練習もできます。
息子は、電車やトミカ、ピタゴラスイッチなどのお気に入りのおもちゃを何時間でも夢中で遊びます。片づけても片付けても盛大に散らかし、棚の上によじ登って散らかったおもちゃの上に飛び降りたりと、危険な遊びもしょっちゅうです。
そんなますます散らかりがちな部屋も、ふすまを閉めてしまえば何とかなる。リビング続きの和室は、そんなおおらかさもあります。どうしても叱りがちになってしまう発達凸凹の息子の育児では、「ま、いいか」と親が思える物理的なゆとりが、思いもかけないほど貴重だったりするのです。
壁には大きな姿見(安全のためフィルムミラー)をかけてあるので、たまにはおもちゃもきちんと片付けて、娘のバレエの練習にも使っています。

インフルエンザなど、強い感染症のときもそばで見守りやすい
子どもも大きくなると、インフルエンザやら溶連菌やら…危険性の高い感染症をもらってくることも増えます。
昨今はインフルエンザに罹患した子どもの異常行動などもニュースになっており、インフルエンザのときなどは、寝かせておいて目を離すのも怖いものです。でも、リビング続きの和室なら、ふすまをしめてしまえば部屋が分けられて、家事をしていても目を離さずに看病しやすいです。
しかも、完全な個室になるわけでもないので、寝ている子どもの気配もわかり、安全性も高いです。子ども自身も、寝込んでいても家族の気配が伝わり、病気のときの心細さも解消できます。
リビング続きの和室は、ライフステージの変化に寄り添ってくれる間取り
リビング続きの和室は、本当に価値のある間取りです。私たち家族のライフステージが変化するたびに、フレキシブルについてきてくれる間取りでした。
現在の我が家の、リビング続きの和室は、
- 息子のおもちゃ部屋
- 娘と息子のファミリークローゼット機能
- 洗濯物の室内物干し場
- 来客用の寝室
などなど、日々フル活用です。
家族のライフステージは、往々にして変化するもの
想定外のことが起こる、ということは、「家族」という単位で暮らす中では往々にしてあることです。例えば、ペットを飼い始める、新しい仕事を始める、新しい趣味ができる、闘病生活が始まる、家族が単身赴任になる…想定できるものだけでも、いろいろ考えつきます。
そもそも、私たちは年老いていき、子どもがいればどんどん成長していくのです。そのたびに、家族の暮らし方は変わって当たり前なのです。
そんな私たち家族のどのライフステージでも、リビング続きの和室はとても役に立ってくれました。
フレキシブルに使えるスペースが、変化に寄り添ってくれた
使い道が限定される部屋ではなく、「何にでも役割を変えていける部屋」が1つあることで、生活の中にはゆとりや潤いが生まれます。
我が家では、そのゆとりや潤いが潤滑剤になって、家族みんなの生活を快適に、思い出深いものにしてくれました。
介護や療育などの難しい事態に直面すると、家族の中でストレスが溜まってしまうこともあります。でも、物理的にもゆとりがあったから、お互いに穏やかな気持ちを取り戻しながら暮らすことができていたのだと思います。
「リビング続きの和室」は、住む人が家に合わせるのではなくて、家の方が住む人に寄り添ってくれる間取りだったのです。
暮らしの変化に沿ってくれる家は、ずっと住みよい家
家族のライフステージの変化に柔軟についてきてくれる間取りは、家族の生活にずっと寄り添ってくれます。
そんな家に守られて暮らすことで、家族の幸せな時間はより色彩豊かに彩られ、かけがえのない思い出としてそれぞれの心に刻まれていく。その思い出が、家族の形が大きく変わったり、終わりを迎えたりする時が来ても、その後のそれぞれの人生の支えになってくれる。
リビング続きの和室のような、ずっと住みよい間取り、ずっと住みよい家は、「家族」をはぐくんでくれると、私は思うのです。
夫にとっても子どもたちにとっても、この家がそういう家であってほしいと願っています。
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