我が家の娘は、ADHD不注意優勢と自閉症スペクトラム障害と診断され、協調運動にも大きな問題を抱えています。
保育園時代は、あまりの不器用さに身辺自立もままならず、体幹も弱くて、食事中にイスに座っていることすらおぼつかない状態でした。
小学校入学前、OT(作業療法)を集中して受けることで、娘の不器用さは劇的に改善されて、娘は日々の暮らしがとても楽しそうになりました。
集中OTの効果は、本当に目をみはるようでした。
ですが、実は娘は、集中OTを卒業し小学校に入学してから、さらに劇的に体幹と不器用さが改善されました。その効果の要因の1つは、「たくさん歩くこと」でした。
今回は、娘には過酷に思われた長い登下校道が、娘の心身にもたらしてくれた効果について、考えてみたいと思います。
娘の登下校道は、往復4kmの山道だった!
我が家は、田舎の山奥にあります。
家を建てたのは、娘を妊娠中のときです。高台にあって眺めがよい、静かなこのエリアがすっかり気に入ってしまったのです。
そこまでの田舎に暮らしたことも、子育てをしたこともなかった私たち夫婦は、子どもが生まれてからのことなど、まったく考えていませんでした。小学校や保育園は、あたりまえに近隣のどこにでもあると思っていました。
将来、娘の登下校が遠くなるかも…?などとは想像もつかなかったのです。
どんな登下校道だったの?
娘が入学する1~2年前、特別支援学級の様子を知るために、学区の小学校について、いろいろ調べることになりました。そこで初めて、娘の学区の小学校が、実はかなり遠い、ということに気がつきました(今更ですが…)。
片道2km、往復4km…
家から小学校までの距離は、片道2km、往復4kmという、小学校1年生にとってはかなり過酷な距離でした。
田舎は基本「車社会」なので、車なら10分で行ける小学校が「実は2キロ離れている」ということを、私はさして意識せずに過ごしてしまっていました…。
行きは下り道、帰りは上り坂
我が家は、高台にあります。そこから小学校に通うので、行きは下り坂、帰りは上り坂になります。帰り道がかなりハードになります。
冬は雪に閉ざされて凍る道
山奥で高台なので、冬の寒さはかなりこたえます。
早朝の道路は、つるつるに凍り付いて、スケートリンクのような下り坂になるか、雪が降って除雪車が積んだ雪で歩道が見えないか、になります。
それで娘は、冬はスパイク付きのスノーブーツを履いて登校します。
入学したころの、娘のスペック
いくら集中OTで底上げをしたとはいえ、入学当初の娘は「気が散る、不器用、体力がない」という、山道登下校には弱すぎる状態でした。
ドラゴンクエストでいうと、「装備は木の棒と布の服のまま、さっそく遠くのお城へ冒険に出かける」といったところでしょうか…。
協調運動障害で不器用
幼いころから、粗大運動も微細運動も、とにかく協調運動についてはかなりの問題を抱えていた娘。歩くことも走ることも不器用で、「雨の日に、傘をさして歩く」などということは、

歩きながら、カサ持てないよ~
という感じで、危険すぎて無理、というレベルでした。
疲れやすい
娘は本当に体力がなく、とても疲れやすい子どもでした。保育園の運動会の次の日は必ずといっていいほど蕁麻疹を出し、遠足の後はくたびれ果てて家でゴロゴロしている、という感じでした。
体幹が弱い
娘は、体力だけでなく体幹も弱い子どもでした。食事中でも学習中でも、椅子にまっすぐ座っていることは1分が限界、という感じでした。
ジャングルジムをくぐったり、河岸の土手を上ったりすることも出来ませんでした。
すぐに風邪をひく
娘は、とにかく感染症に弱い子どもでした。
保育園に入った直後は、だれでもやたらと風邪をもらうものです。保育園のママ友さんたちからは、「1年もすると強くなってくるよ~」となぐさめられていました。
ところが、1年たっても2年たっても、一向に免疫力が強くなる気配はありません。年長クラスになっても、月に1度は、発熱したり胃腸炎になったりしてお休みする状態でした。
集中して歩けない
娘は異常に「気が散る」子どもでした。歩道を歩いていても、空に飛行機雲を見つけると、ふらふらとそれをながめながら歩いています。
田んぼのあぜ道を歩いていて、ひらひらと舞うちょうちょに気をとられ、田んぼに落っこちたことも2度や3度ではありません。登下校ではかなり危険な状態でした。
入学したばかりのころの、娘の登下校の様子
心配していた通り、入学直後の娘にとって、往復4kmの登下校道は、過酷すぎるものでした。それでも、同じ子供会のお友達は、みんなてくてくと歩いていました。普通の子どもって、けっこう体力があるのですね。
気が散って迷子、家や学校にたどり着けない
見るもの見るもの、気が散る娘。すぐに迷子になり、朝は私が付き添っているのに、学校にたどり着くのも一苦労です。帰りは上り坂なので、スピードも段違いに遅くなり、さらに気が散るので2時間かかっても帰れません。
最初は近所の5年生のお姉さんに連れて行ってもらっていました。ですが、娘のあまりの遅さと危険さに、行きも帰りも私が付き添うことに。
娘にとっては往復4km、私にとっては往復8kmの、過酷なウォーキングでした。私の体力が持たず、つらいときは車で送り迎えをしていましたが、それに関しては学校側からやんわりと注意を受けていました。
体力的に無理過ぎて、学校でお昼寝
娘にとっては、2kmのウォーキングは体力の限界でもありました。
入学して2か月ほどは、特別支援学級の片隅で、ちょこちょこ昼寝をさせてもらっていました。下校時刻になって起こしてもらい、何とか帰ってくる状態でした。
帰ってきたら、そのまま眠ってしまって朝まで起きない
何とか昼寝をしないで帰ってこられた日は、くたびれ切ってしまって、ランドセルを下ろしてそのまま眠ってしまう、ということがよくありました。
本当にくたびれていたようで、ゆすっても起きません。そのまま朝まで眠ってしまうくらい、娘はくたびれていました。
長い登下校道、毎日がんばって歩き続けることで、娘に起きた変化
こんな過酷な登下校でしたが、娘はがんばって学校に通い続けました。
それだけ、学校に行き、特別支援学級で過ごすことが楽しかったのだと思います。娘のとにかくまじめなところも、長い距離を歩くために、良い方に作用していたのだと思います。
こうして、毎日継続して歩く日々が続いた娘に、半年から1年が過ぎたころ、ぐっと変化が見えてきました。
体力がついた!
入学して半年ほどで、娘は急に体力がつきました。いろいろな行事の後でも、疲れにくくなったのです。毎日の登下校でも、帰ってきてから疲れを見せることがなくなってきました。
体幹がしっかりしてきた!
1年生の冬頃には、娘の体幹が、目に見えてしっかりしてきました。食事中や授業中、イスから落ちなくなったのです。
宿題をやるときでも、15分でも平気で座り続けられるようになりました。もちろん、普通の子と比べると短すぎですが、入学当初に1分座るのもやっとだった娘にとっては、かなりの進歩だったと思います。
風邪をひきにくくなった!
1年生の秋ころに、それまで毎月のように風邪をひいていた娘が、急に風邪をひきにくくなりました。気のせいかと思っていたのですが、そこからは3か月に1度くらいしかひかなくなったのです。
それに、かかってからも治りが早くなりました。
微細運動が、少しなめらかになった!
歩くことと、直接関係はないはずなのですが、入学して半年ほどで、微細運動が目に見えてなめらかになりました。
例えば、それまでえんぴつを握る力も弱く、「くもんのえんぴつ」などを使って少しでも書きやすいようにと工夫していたのですが、鉛筆を握る手に力がついて、筆圧が上がってきたのです。
それまでよりもしっかりした字が書けるようになったせいか、書いた字も、ノートの大きいマスからははみ出しにくくなりました。
毎日、長距離の山道を歩くことで、どんな効果があったのか?
もちろん、入学してから半年、1年、という短期間での娘の急激な進歩は、登下校道の効果だけではなく、特別支援学級でのきめ細やかな指導が大きかったと思います。
しかし、情緒面だけではなくフィジカルな面も大きな伸びを見せた娘。やはり、毎日登下校道を歩き続けたことが、とても良い影響があったのだと、私は確信しています。
朝日を浴びながら登校道を歩いて、骨も筋肉も丈夫になった
8時までに学校に登校するために、さっさと歩けない娘は、朝7時には家を出発しなくてはなりません。冬場なら、朝日が昇るギリギリの時間帯です。
朝のさわやかな空気を吸いながら、出てきたばかりの朝日を浴びながら、美しい野山をながめながら歩く、2kmの道のり。朝の登校時は下り坂になるので、足も弾みます。
娘はそんな登校道を歩くことで、骨も筋肉も丈夫になりました。それが、娘の弱かった体力や体幹を鍛えてくれたのだと思います。
体幹が鍛えられたことが、粗大運動だけではなく、微細運動にも良い影響をもたらしたのではないでしょうか。
下校道の、上り山道を歩く有酸素運動で、心肺機能も向上した
帰り道は、上り坂の2kmの山道です。1日の学校生活で疲れもありますが、おやつとゲームと家族が待っている家にたどりつくために、娘はがんばって歩いて帰ってきました。
平地を2km歩くのと上り坂を2km歩くのでは、心肺機能への負荷が全く違います。毎日続けることで、心肺機能は確実に向上したと思います。それも、体力アップにつながったのだと思います。
毎日歩くことで、免疫力がアップした?
「風邪をひきにくくなった」ことと、過酷な登下校道との関係は、医療分野の専門家ではない私にはよくわかりませんでした。保育園は、いろいろな病原菌やウィルスをもらいやすい環境だったのかもしれません。
ただ、小学校に入ってからも3か月ほどは、娘はしょっちゅう体調を崩していました。そして、体力がつき、体幹が強くなってきて、娘の体つきが見違えるようにしっかりしてきた時期と、急に風邪をひきにくくなった時期は、完全に一致していました。
おそらく、娘の身体が強くなったことと免疫力が上がったことは、無関係ではないと思います。
以下のような情報サイトもありました。


まとめ
療育に通うくらいに協調運動に問題を抱えているお子さんには、ぜひウォーキングを試してみてほしい!娘ほど過酷な道のりはちょっといただけないけれど、楽しく続けやすい適度な運動量で、ですが。娘を育てた経験から、私はそう思っています。
しかしこの、新1年生にはちょっと過酷すぎるであろうウォーキングを娘がつづけられたのは、それが「大好きな学校に行くための道」だったからでもあります。
イヤイヤながらではなく、学校が楽しいから、特別支援学級を心のよりどころにしているから、長い道のりでも毎日頑張って通えるのです。
娘のことを理解し、のびのびと育ててくださっている小学校には、本当に感謝しています。
今ではすっかりお姉さんになった娘は、近所の下級生たちを引き連れて、元気に学校に通っています。
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