3歳の夏から通い始めた、息子の母子通園療育。

半年くらい通って、集団生活の練習をすれば、きっと息子は見違えるように発達するはず…。
保育園入園のときには、きっと、しっかりなじめるようになっているはず…。
そう、自分に言い聞かせながら始めた、私と息子の母子通園。
しかし、開始から半年ほどたったところで、
- 息子の発達検査の結果(境界域)
- 療育園で、日に日にあらわになっていく、こだわりや偏り
などを考慮した結果、

母子通園を、とりあえず、年少クラスのもう1年、延長しましょう。
と、療育園の先生から宣告(?)されることになりました。
専門の先生と親とで、どっぷりと息子の発達に向き合う期間が、もう1年、延長。しかも、週3日から週5日…通園日数も増える。
娘の幼少期よりもずっと手厚く、息子の療育ができる。
本当に、ありがたいはず、なのですが…。
息子の発達凸凹に理解のある母、と見せかけて、実は「豆腐のメンタル」な私は、
- 息子の偏った発達と、向き合わざるを得ない、毎日
- 専門の先生方の前では、手を抜けない、なまけられない療育
- 平日の大半を拘束されるのに、お給料をもらえない、むしろ払うスケジュール
という、これから始まる「週5日の母子通園療育」に、内心、かなり重い負担感と疲労感を感じていました。
それでも、逃げるわけにはいきません。これから始まる1年間は、専門の先生方と「チームで」息子を育てることができる、大切な1年間です。

息子のこれからの人生にとっても、私たち家族にとっても、有効な1年にしなければ…
母子通園療育1年延長、の「宣告」から3か月。
ようやく私の中にも、息子の療育への「前向きな気持ち」と「覚悟」が、よみがえってきました。
でも、息子のより大きな発達をうながすためには、何が大切なのか?
発達に偏りがあり、コミュニケーションの難しい息子に、いきなり大きくジャンプアップさせようとしても、無理があります。地道に着実に、「スモールステップ」を積み重ねていくしかありません。

でも、スモールステップって、難しい…。
次に何させたら、もっと成長できるのか、よくわからない…。

スモールステップだからこそ、できるだけ近道で、最速で発達してほしいけど…。
何をさせたら「遠回り」になってしまうのかも、分からない…。
スモールステップ、という言葉を聞くたびに、私はとても難しく感じていました。
スモールステップの「大きさ」と「方向性」。
実は、その見極めのためには、
- 今「できること」「苦手なこと」
- 遠い未来を見据えた目標
が、とても大切になってきます。
今回は、もうすぐ年少クラスになる、というころの息子の状況と、まず最初に目指したスモールステップについて、まとめたいと思います。
母子通園療育~9か月たった、息子の様子
母子通園療育の開始時、
- 給食…泣いて暴れて拒否・脱走
- お昼寝…泣いて拒否。個室対応
- トイレ…入室をかたくなに拒否
と、親も挫折感でがっくりするほどの「強い拒否」を持っていた息子。けれど半年たったころには、
- 給食…座って「いただきます」はする
- お昼寝…個室では、泣かずに入眠
- トイレ…入室して、便座には座る
など、伸びる兆しが見えてきました。しかし、最終的に目指す、
- 給食を食べる
- トイレで排泄する(家ではできる)
などという到達点には、ほど遠い息子。なかなか大きな成果が出ない療育に、私は大きな疲労感を感じていました。
そこからさらに、3か月ほどが経ち、母子通園9か月目にさしかかるころ。息子は、私の期待や予想とはちょっと違った方向で、息子らしい歩みを見せていました。

そっちに来たか…!?
と、私はあっけにとられることが多かったです。
給食は、みんなと一緒に食べたい!という姿勢?
相変わらず、

おいしいご飯をいただきます。
(ご飯と牛乳は摂取)
これ食べられません。いりません。
(おかずの皿をのける)
おいしいご飯ごちそうさまでした。
で終わってしまう、息子の給食。
しかしここにきて、息子の給食(ご飯と牛乳だけ)の「食べ方」が変化してきました。
以前は、
- 周りのお友達のことなどまったく目に入っておらず
- 食べたいもの(主にコメ)だけ少し口にする
- コップの牛乳をごくごく飲み、さっさとごちそうさま
という状態だった給食。それが、
- 食べながら、食べているほかの子を、ちらちら眺めている
- 牛乳を、あたかも食べている風に、スプーンですくって1口ずつ飲む(時間がかかる)
という様子を見せるようになりました。
息子の中に、

給食は、みんなと一緒に、同じように食べたいな…
という気持ちが、ほのかに芽生えてきたように感じました。
トイレは、初めて1度成功!しかし…
トイレは、初めて1度、「療育園の便座で排泄」することに成功しました!
しかし。
そこから先の息子の反応は、私の期待と予想の、はるか斜め上を行くものでした…。
トイレに座って、初めて排泄できた日。しかしそのとき、息子本人は、いつも通り、

便座に座るだけ
という気持ちで、排泄するつもりはなかったようです。
しかし、たまたま、できたのです。
「自分がトイレで用を足した」という…その事実そのものに、ものすごく驚いた様子の息子。

ギャー!トイレおしっこ、こわいよー!
と泣き叫んで、トイレから脱兎のごとく逃げました。追いかけていって、

できたね!

えらかったね!
と、先生と親とでほめちぎったのですが、ちっとも息子には刺さらず。
なんとそのまま、トイレを怖がって入れない「初期状態」に逆戻りしてしまいました…。

「トイレで排泄」という成功を体験することで、怖がらずにできるようになる!
と私は考えていたのですが…。成功したことに驚愕して後退してしまう…などとは思ってもいませんでした。
そんなわけで、トイレに関しては、ふりだしに戻ってしまいました。
お昼寝は、大部屋で眠れるようになった!
「お昼寝」も泣いて暴れて嫌がり、いつも「個室」を用意してもらっていた息子。
しかしある日、園の都合で、いつもの個室が使えませんでした。
別の個室を用意してもらった息子。しかし、いつもと違う部屋(会議室の一角でした)の雰囲気に、かなり居心地が悪かったのでしょうか。

ぼく、大きいお部屋で寝る。
と、息子が突然言いました。私はびっくり。
しかしこれは、息子本人が、

みんなが寝ている大きいお部屋で寝てみたい…
と思ってくれた、またとないチャンスです。
すぐに先生と、お昼寝布団を大部屋に移しました。遮光カーテンが引かれ、暖房がよくきいた、あたたかいじゅうたんのお昼寝部屋。息子は騒ぐことなく、穏やかな顔でお昼寝をすることができました。
この日以降、息子は、大部屋でお昼寝できるようになりました。

こういう息子でも…。
ある日熟した実が自然に落ちるように、階段をのぼることができるのだな…
と、私は感慨もひとしおでした。
お昼寝に関しては、次の目標は、「親なしでも眠れるようになる」というものになりました。
絵カードを駆使して、スケジュールを把握
息子は、1日のスケジュールをこなすことについても、切りかえが極度に苦手でした。
朝の会から園庭に出るときも拒否、園庭から教室に入ることも拒否、給食からお昼寝の流れも拒否、お昼寝から起きるのも拒否。拒否、拒否、拒否…。
それで、スケジュールを「絵カード」で、こまめにチェックするようにしました。
ですが、1日の流れを、すべて一度に絵カードで見ると、
- 給食
- 昼寝
- おやつ
などなど、嫌いなカードがいくつも目に入って、息子が怒り出します。それで、
などの形で、切りかえ時の「前と後の絵カードのみ」を、矢印(→)シールの左右に貼り付けて使える「行動切り替え用のカードボード」を、先生が別に用意してくださいました。
このカードボードを使いながら、次の行動に切り替える練習を重ねました。
スモールステップでの「次の段階」を、どうやって決めたらいいのか?
息子に対して、親が期待している「とりあえずの到達点」は、
- 給食で、いろいろなものを楽しく食べる
- トイレで、不安なく排泄する
- 服を自分で着る・脱ぐ
といった、「日常生活での身辺自立」です。
まず、「コミュニケーション」以前の段階です。まずはここをクリアできたら、本人も親も、日々の暮らしがぐっと楽に、楽しいものになります。
身辺自立がもう少しできれば、保育園の入園も視野に入れることができます。療育園でも、母子通園ではなく母子分離にできるかもしれません(そういう子もけっこういます)。
そうすれば、私もパートなどで働きに出たり、施設に預けっぱなしの夫の祖母のお世話も、もっと増やせるかもしれません。今は息子にかかりきりで、祖母の通院の付き添い(規約では家族がする)なども、施設の職員の方たちに肩代わりしてもらっている状態です…。
けれど、そんな大きな目標にたどり着くためには、結局、1段ずつスモールステップを積み上げていかなくてはなりません。
しかし、このスモールステップ、

次は、どこまで目指せる?クリアすることで、ちゃんと次につながってる?
と、見極めることが、私はなかなか難しく感じます。
次の段階に進むたびに、これでいいのか悩み、なかなか出ない成果に不安になり、焦り…。それが息子に伝わって、ますますうまくいかなくなり、悪循環になったり。
スモールステップの「次の段階」は、どうやって決めるの?
来年度に向けた、療育園の先生方と親との個別面談の中で、私はその疑問を先生方に相談してみることにしました。
療育園の先生方と、来年度の目標を考えてみる
ここの療育園では、1~2月に、療育園の先生方と親との個別面談があります。通園療育を継続する場合は、このときに、次年度に目指したい目標を、先生方と親とで考えることになります。
私はここで、

息子には、とりあえずまずは、身辺自立ができるようになってほしいんです。

でも…。
- まず何ができるようになったらいいか?
- できるようになるためのスモールステップ、その「高さ」と「方向性」の決め方は?

ということが、息子を見ていても、全然分からないんです。

息子がこれからどう伸びるのかも、よく分からない。
何が近道で、何が遠回りなのかも、よく分からない。

先が見えない気持ちになります…
と、相談しました。
療育園の先生方は、

遠い先に大きな目標があることは、療育の方向性を決めるうえで、とてもいいことです。

それを踏まえて、今はまだ、
ではなく、
が、大切だと思います。

つまり…。
- 好きなことや、できることを見つける。
- そこから、少しずつレベルアップしていく。

それが、無理なく、発達を促すことができる方法だと思います。

そのときに、
「いずれはきちんと食事をしてほしい」
「どこでもトイレに行けるようになってほしい」
という「まだ先の目標」は、方向性を決める指針になりますよ。
と、方針を示してくださいました。
さすが、専門の先生です。私はだいぶ、目の前の道が明るくなったような気がしました。

スモールステップでの「次の段階」は…。
- 「未来」を見据えて
- 「今できるところ」を伸ばすように

そうやって、決めていけばいいんだ!
と気がつきました。
スモールステップは、未来を見据えて…息子が今できること、苦手なことは?
スモールステップを積み重ねていくため、「未来」と「今」を見つめていくことの大切さを、先生方との面談で強く感じた私。そのために、
- 息子が今、できることは、何なのか?
- 息子が今、苦手なことは、何なのか?
を、まず見極めることが、とても大事になると思われました。
息子が苦手なこと;コミュニケーション、初めてのこと
息子が苦手なことは、
- コミュニケーション
- 未経験のこと・モノ
です。
コミュニケーションは、「相手の意志に興味がない・理解できない」という部分です。
未経験のこと・モノは、苦手というより「恐怖」の対象のようにも見えます。
息子ができること;パターンで覚えること
息子ができることは、
- パターンで覚えること
- 理解したことを、記憶すること
だと思います。
息子は、
ということができます。
相手の言ったことや、絵本の読み聞かせ・動画視聴などでインプットした情報を、完全コピーすることもできます。長文のオウム返しも得意です。
そして、
という部分も感じます。
まあ、

インプットそのものが、難しい…
のが問題ですが。
息子が得意なこと;数字・文字の認識、車両全般
息子は、
- 数字・文字の認識
- 電車・緊急車両・重機などの認識
が、とても得意です。
もっとも、数字・文字に関しては、本が読めたり計算ができたりするわけではなく、「文字単体で読める」だけ、読むのが好きなだけ、ですが。
車両に関しては、ショベルやはしご車、ポンプ車やドクターイエロー(新幹線路検査)など、駆動・可動する部分を物理的な視点から見つめることが、面白いようです。同じ視点からか、ピタゴラスイッチも好きです。
この、「得意で、好き」なものに関する情報のインプットは、かなり良いようです。コミュニケーションが必要な時には、その手段として、
ということも、有効だと思います。
息子の苦手の「理由」も、見極めたい!
息子のスモールステップの「方向性」と「大きさ」を決めるときに、
- なぜ、苦手なのか?
- どうすれば、苦手を和らげられるのか?
を見極めることも、重要になってくると思います。
極端なシングルフォーカス?

見たいことしか見ない

したいことだけするの

やりたくないことはやりたくない!
という、相手の思いがとても伝わりにくい息子の特性。これは、

極端なシングルフォーカスに起因していることが大きいのでは?
と、私は感じています。
逆に言えば、

フォーカスさえできれば、情報がインプットできるかも!
ということなので、
という、前向きなとらえ方もできます。
そう簡単に行かないのは、よく分かってはいるのですが…。
感覚過敏?
息子は、強い感覚過敏を見せることがあります。
療育園の先生にも、

息子くんが給食を嫌がるのも、園のトイレを怖がるのも、実は、

ご飯、冷たすぎる

ご飯、熱すぎる

便座が冷たくて痛い
など、もしかしたら感覚過敏が影響しているかもしれません。

「許容できる温度の範囲」が、ものすごく限定されている子は、息子くんだけでなく、療育園ではわりとよくいます。
と、指摘されました。
息子は、快・不快をまだ上手に言葉に表すことはできません。だから、感覚過敏が原因になっていると断定はできません。しかし、息子を見ていると、

それはありそう…
と、私も感じています。これは、
というかたちで、日常生活のいろいろなことがもっとスムーズになるかもしれません。1人でできることも、増えるかもしれません。
人の表情が怖い?よくわからない?
息子の発達検査を担当していただいた言語聴覚士の先生には、

息子くんが視線を合わせにくかったり、話す相手のことを見ないのは、「人の顔を見るのが怖い」という理由もあるかもしれません。
と指摘されました。
発達障害のある人には、
- 人の表情は、刻々と微妙に変化し、とても認識しずらい
- 人の顔が、もやもやと見えてはっきり認識できず、のっぺらぼうみたいで怖い
という感覚を持つ人がいるそうです。

相手の気持ちが、よくわからない…
ではなく、

相手の顔が見えない・怖いから、相手の気持ちが読めない…
かもしれないのです。
私もなんとなく、息子にそれを感じています。私が動いているときよりも、静止しているときの方が、息子は注目します。「男の子がズボンを履く動画」を見せるよりも、「ズボンの履き方を図解した絵カード」を見せる方が、息子には伝わります。
「実写での人間の動き」は、息子にとっては「見たくないもの」「見づらいもの」なのでは?と感じるのです。
息子らしく発達していくために、有効な1年にしたい
1年延長になった、母子通園療育。せっかくなら、息子のためにも私たち家族のためにも、よい1年になるようにしたい。
そのためには、息子の「今」と「未来」をよく見極めた、着実なスモールステップを積み重ねていくことが大事になる、と私は考えています。
行きつ戻りつかもしれないけれど、息子に、より大きく伸びてほしい。
そのために、療育園の先生方と親とで、チーム一丸となって、サポートしていける1年にしていきたい。そう思います。
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