私は、小学生のころの趣味の1つが「模様替え」という、それなりに片付けの好きな人間です。
ミニマリスト的な暮らしは、あまり性に合いません。

必要なモノが適度にそろっていて、それらがあるべきところに片付いている…
という暮らしが好きです。子どもが生まれる前の楽しみは、インテリアショップめぐりと写真たてを集めることでした。
しかし、生まれた娘は、ADHD不注意優勢と自閉症スペクトラムという「発達障害」を背負っていました。発達障害のある子どもは、片付けが本当に困難な子が少なくありません。当然わが家でも、娘は真性の「片づけられない女の子」です。
放っておくと、娘の使ったものは、すべて「使いっぱなし」です。必要なモノがどこにあるかわからなくなり、娘はそのたびに、

ない!ない!
○○がどこにあるのかわからなくなっちゃった!!!
と盛大なパニックを起こして泣きわめき、探すことすらままならない、という不毛な事態に陥ります。
娘本人もそれでとても困っていますが、親である私も、ごっちゃりとしてしまう我が家に、それなりにストレスを感じています。

うちの子は、ものすごく、片づけられない…
家の机も、学校のロッカーも、カバンの中も、とにかくめちゃくちゃ…
と、何度もため息をついています。
なんとかして、娘も私もストレスをためにくくならないか。将来、娘が大人になった時に、片付けや整理整頓で困ることを減らしたい!試行錯誤の結果、たどり着いたのは、
- 放り込み収納
- 引っ掛け収納
- リビング学習
- 机の共有
でした。
今回は、そのなかでも「放り込み収納」と「引っ掛け収納」に焦点を当てて、娘が小学生になってからの「学習机まわり」の整理整頓について、まとめたいと思います。
整理整頓の方法探しは、子どもの特性のタイプを見極めて
最初に私は、雑誌や書籍、インターネットなどで、「発達障害のこどもの片づけ」について調べました。そして、片っ端からその方法論を試してみました。ですが、娘にはとてもできなかったり、面倒くさすぎて私が音をあげたり…うまくいかないことばかりでした。そしてようやく、

発達障害、といっても…。
子どもが持っている特性は、子どもそれぞれで違うんだ。
ということに、いまさらのように気がつきました。
「整理整頓」「片づける」とは?
そもそも、「整理整頓」「片づける」とは、モノを、定位置に置くということに尽きる、単純な作業です。
鉛筆は筆箱に。ゴミはゴミ箱に。脱いだコートはフックに。もらったお便りはランドセルに。「モノ」には行き先が決まっていて、その「定位置」に置くことが、すべてなのです。
「どうして片付けられないの?」の原因を、見極めていなかった
片づけることは単純作業なのに、どうして片付けられないのか?その原因も、その子によってまちまちです。
- 片付けより、ほかにやりたいことがあるから
- 面倒くさくて、やる気になれないから
- モノが多すぎて、処理しきれないから
- 不器用だから
- どこに置けばいいのか、捨てればいいのか、判断が難しいから
- 片付けしている時に片付けしていること「自体」を忘れて、放置するから
などなど、私にはちょっと理解しがたい理由で、うまくいかないこともあります。
わが家では、娘の整理整頓については、
を考えるようになったことで、少しずつ改善の兆しが見えるようになりました。
娘は、どんな特性が「片づけ」を難しくしているの?
何年も娘を観察してきて、見えてきた「整理整頓に不利になる特性」は、
- とにかく不器用(協調運動障害)で、引き出しに入れることすら上手にできない
- 片付け中にも気が散って集中しにくく、「片づけていること自体」を忘れる
- モノを「どこから出したか」忘れる
- モノを捨てられない(捨てる判断が難しい)
- 工作づくりや絵を描くなど、創作活動が好き
という部分です。夫に言わせると、「モノが多い」こともあるそうですが…。ここに合わせた工夫を重ねることで、少しは片づけやすくなりました。
うまくいかなかった片付け方法論①;モノを減らす
今までいろいろな「お片付け法」を試してきた我が家でしたが、まったくうまくいかなかった方法はいくつもあります。方法論としては理にかなって優れていても、娘の特性に合っていなかったのです。
方法論に合わせられるような子どもなら、そもそもそんなに困った事態にならないでしょうが…。ですから、娘でもできる再現性のある方法を見つけることは、とても大事なことでした。
普通なら、モノを減らすのは片付けの第一歩
発達障害に関係なく、雑誌の「片づけ特集」では、おおかた、

まずは、いらないものを捨てましょう!
モノを減らすことが第一歩!
と書かれています。しかしこれは、我が家の娘にとっては、かなりの無理難題でした。
モノが捨てられない娘
娘は、「モノを捨てる」ことが、とても苦手です。

壊れてるけど、このおもちゃには、楽しかった思い出があるから。
とか、

ボロボロになっちゃってるけど、これはがんばって描いた絵だから。
とか…。いろいろな「モノ」に、過剰な愛着を持ってしまい、捨てる判断ができないのです。
普段は存在を忘れているものでも、見つけ出してしまえば捨てられません。捨てようよ、と持ち掛けると、泣いたり落ち込んだり、パニックを起こして日常生活自体が滞る、という特性まで出現します。
お絵描き工作、大好きな娘
娘は創作意欲にあふれ、工作やイラストなど、いろいろなかわいいモノを無限に生み出します。ものすごく不器用なので、出来上がりは微妙なのですが、アイディアは天井知らずです。
発達障害の子どもは、「苦手を練習する」より「好き・得意を伸ばす」方が総合的な伸びしろが大きいので、娘の創作活動は、できるだけ邪魔しないようにしています。
しかし、これが散らかります。作品も、紙パックや空き箱などの材料も、かさばるのです。そして出来上がった作品は、もちろん愛着も増してしまい、上述の通りで捨てられません。
仕方のないこととあきらめることにした
「モノを減らす」ということに関しては、私は、あきらめるという選択肢をとらざるを得ませんでした。
特性に配慮し、「長い目で見た」娘の伸びしろを優先するためには、仕方ないと割り切りました。娘が自分で捨てる気になるまで、待つことにしています。
うまくいかなかった片付け方法論②;細かいラベル付け
定型発達の人が、日々の暮らしの中でモノを管理するためには、「細かいラベル付け」が有効なことが多いです。自分の持っているモノの内容と量を可視化し、自分だけでなく、家族みんなで家を整然と整えておくシステムができるからです。
しかし、こと娘に関しては、「細かいラベル付け」は、あまり有効ではありませんでした。
ラベルを探しているうちに、片づけていること自体を忘れる娘
モノをどこから出したか、忘れやすい娘。しかし、鉛筆を片づける場所に「えんぴつ」とラベルを付けておいても、

『えんぴつ』は、どこに貼ってあるのかな?
とラベルを探している5秒ほどの間に、自分が「鉛筆を片付け中であること」そのものを忘れる娘…。作業記憶(ワーキングメモリ)が低いという特性が、もろに出てしまうのです。
ラベリングより「距離」が重要
次の段落でも後述しますが、娘にとっては、ラベリングよりも「モノと定位置との距離」の方が重要でした。
例えば、鉛筆を使っている紙の横に筆箱があれば、鉛筆を筆箱に戻すまでには1秒で足ります。1秒なら、「片づけていること自体」は、忘れません。距離に気を付けながら定位置を決めることで、学習机周りを娘にも片づけやすいかたちにするようにしました。
片付けと整理整頓のために行っている工夫は「1アクション」
小学校に入学してから、試行錯誤を重ねてきた、娘の「お片付け」問題。不器用、注意欠如。そんな娘のために有効だった方法論が、

1アクションでお片付け!
でした。
いつかモノの管理を、娘が自分でできるように、娘の特性を見つめながら我が家で工夫していることを紹介したいと思います。
目指すルールは、1アクションで片付け完了
1アクションで片付ける、というのは、「1つの作業で、片付けが完了する」ということです。
例えば、「鉛筆をしまう」という片付け作業で見てみます。「鉛筆を引き出しにしまう」というシステムでは、
- 引き出しを開ける
- 鉛筆を入れる
- 引き出しをしめる
という、3つの作業で完了することになります。娘の場合、引き出しを開ける作業のために、

引き出しにしまうことを思い出す

引き出しはどこだっけ?と周りを見回す
という行動あたりで、気が散った娘は、

鉛筆をしまうこと自体を忘れる…
という可能性が高くなります…。
もしそれが、「えんぴつを、机上の箱に入れる」というシステムなら、
- 鉛筆を入れる
の1つの作業で、片付けが完了することになります。鉛筆を入れる箱が机上にあれば、作業のための「入れる箱を見る」という行動には1~2秒しかかりません。気がちるリスクは低くなります。
もちろん1アクションで済まないものも多いのですが、1アクションを心がけるだけで、娘にとっての片づけやすさがアップしました。
1アクションにしなかった失敗談
娘の学習机には、ご丁寧にも、ランドセルをしまう引き出しがついていました。カラフルなランドセルや雑多なキーホルダーなども、しまってすっきり見えるというものです。
しかし娘にとっては、ランドセルを引き出し収納に入れることは、何の得にもなりませんでした。ランドセルに関する「片付け」で、3アクションも4アクションもかかることになってしまったのです。
- そもそも不器用で、ランドセルを上手にしまえない
- 筆箱を出すのにもプリントをしまうのにも、いちいち引き出しを開けてから、ランドセルのふたを開けなくてはいけない。不器用な娘にとっては苦痛
- ランドセルと一緒に持っていく手提げを一緒にしまえないので、持っていくのを忘れる
という具合です。
結局、ランドセルを、おろしてそのままボーンと置ける棚を別に用意し、使っていました。
1アクションのために、学用品は「放り込み」収納
1アクションで片付けるために、娘の学用品や遊び道具は、基本的には「放り込み収納」にしました。
前のページでも触れましたが、その時注意したのは
- ざっくりした分類
- モノと定位置との距離
です。
あまり細かくせず、ざっくりした分類で
鋏、紙、鉛筆、消しゴム、色鉛筆、定規、のり…。子どもの学用品は、種類も多く形も雑多です。工作好きな子どもならなおさらです。
しかし、それを細かく分けてしまうことは、娘にとってかなりハードルの高いことでした。そこで、モノの分類はできるだけざっくりとするようにしました。
例えば、
- 学校に持っていくもの→ランドセル
- 机で使うもの→机上の箱
- 工作に使う材料や作りかけ→足もとの大きな箱
- ノート、紙、プリント類→引き出し
- 本とゲーム→本棚
- ゴミ→机上のゴミ箱
という感じで、とにかく使った後に「定位置に放り込む」ということがルーティンになるように練習しました。これなら1~2アクションで片付けられるので、娘は練習してできるようになってきました。
そして、そんな風に練習を重ねた結果、最近では、筆記用具を引き出しにしまえるまでに、娘は成長しました。

娘の机の引き出しの中
モノと定位置との距離は近く!
定位置を決めるときにもう1つ気を付けたのは、「モノと定位置との距離」を近くするということでした。
娘は定位置を探してキョロキョロする間に、「片づけていること自体」を忘れやすいです。気が散って、忘れてしまうのです。そのリスクを減らせたのが、「モノと定位置との距離を近くする」ことでした。
つまり、モノを使って作業する場所と、片づける定位置の場所を、同じにしたのです。
「机で使うものは、机に片付ける場所を作った」ということです。鉛筆なら、机上の箱。本なら、机で読むので机の本棚。という感じです。
使っている場所でそのまま放り込めれば、片付けが完了するまでの時間が短くなります。そうすれば、気がちりにくくなります。
しかし、携帯ゲーム機などはリビングに持って行ってしまったりするので、そういう時には置きっぱなしになりやすくなってしまうことが、目下の悩みです。

机のわきのゴミ箱。捨てやすい。
引っ掛けられるものは、「ひっかけ収納」
上着や手提げかばん、髪の毛のゴムやくしなどは、基本的には、1アクションの「ひっかけ収納」にしました。
そのために我が家では、天井と床に突っ張って使用する「突っ張りポールハンガー」を多用しています。
どんどんフックが足りなくなる…増設できるハンガーを!
小学校高学年になると、習字セット、絵の具セット、裁縫セットにお出かけ用リュックなどなど…袋のものは増えるばかりです。女の子だと、プレゼントされたアクセサリーやキーホルダーなど、こまかいものも増えがちです。
どうしても増えてしまうものを管理するのに、増設できる突っ張りポールハンガーはとても便利でした。
見えやすいように、1フック1アイテムを徹底
「どこにかけたっけ?」と探す時間の短縮も、娘にとってはとても重要です。かかっているものが一目で見渡せるように、何でもかんでも引っ掛けず、1フックに1アイテムを引っ掛けることを、娘に根気良く教えています。
これはまだ練習中です…。どうしても、引っ掛けやすい高さのフックに、モノが集中してしまいがちです。
見た目の美しさは、あきらめることも精神衛生上必要
1アクションは、ものが隠せないので煩雑に見えます。美しいインテリアが好きな私にとっては、なかなかストレスを感じる部分もあります。
しかし、まずは「娘が自分で片付けられるようになる」ことの練習が最優先です。見た目のすっきりとした美しさは、あきらめることも肝要です。
でも、散らかりやすい部分は死角になるように工夫
それでも、工夫できることはあります。散らかったエリアが死角になるように、配置を工夫することです。
娘の学習机はリビングダイニングの一角にありますが、食事のときにそのごちゃごちゃしたものが目に入ると、とてもげんなりします…。
なので、食卓に座った時には、娘の学習机があまり目に入らないように、食卓イスの視線の先に学習机が来ないように配置しています。横を向けば目に入ってしまいますが、まあ、最低限の対策はしています。
不器用さへの工夫
娘は本当に、可哀そうになるほど不器用です。本も、本棚に「縦に」しまえるようになったのは、小学校3年生を過ぎてからでした。
そんな不器用な部分に工夫したのが、クッションテープです。
学用品の転がり落ち防止に、クッションテープ
娘は、机から鉛筆や消しゴムなどの筆記用具をよく落とします。それを少しでも減らすために、机のふちに、クッションテープを貼りました。
クッションテープというのは、乳幼児が家具の角に頭をぶつけてもいいように貼り付ける、粘着テープがついたクッション材のことです。これならヒジに当たっても痛くないし、適度な高さがあって、鉛筆などの転がり落ち防止になります。

机のふちのクッションテープ
片付けは難しいスキルだけど、将来に向けて身につけてほしい!
ここまで書いてきて、

なんだか、普通の人には当たり前すぎることばかり書いちゃったかしら…
という気持ちになりました…。
しかし、片付け・整理整頓というのは、娘にとっては、難しくて、でも将来に向けて、必要最小限のスキルを身につけておきたい分野でもあります。
これからも、年齢に合わせてレベルアップしながら、娘と一緒に練習していきたいと思います。
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