発達検査の結果を受けて、療育をはじめたものの、なかなか成果の出なかった娘。娘のクラスメイトで、同じように療育を受けているおともだちのお母さんにすすめられて、私は2つ目の発達外来に行き、セカンドオピニオンを受けました。
セカンドオピニオンをうけて、私は驚きました。問診の仕方も着目点も、病院によってこんなにも違うのか、と。
そしてあらためて提案された療育をはじめると、成果が少しずつ見えてきて、娘の日常生活は変わりはじめたのです。
今回は、ADHD(主に不注意型)と自閉症スペクトラムをもつ娘のそのころの様子と、新たな療育の内容、そして娘の変化について書いていきたいと思います。
セカンドオピニオンを受診した5歳ころの、娘の特徴
セカンドオピニオンの先としてすすめられた病院。そこは実は、1才過ぎたころからお世話になっている、娘のかかりつけの小児科でした。
私はそれまで、かかりつけなのに、発達外来の存在に気が付いていませんでした。
セカンドオピニオンを受けたころの娘の特徴について、以下にまとめました。
おしゃべりは良くできるけれど、すぐ話が脱線する
娘のおしゃべりは、すぐに内容が脱線することが多かったです。

うちにはパパとママがいて、農場にいっしょに行ってヤギと遊んだんだけど、ウサギは小屋の中に入って出てこなくて、公園でコイにエサをあげたらパクパク食べて、アイスを買って食べたらこぼれちゃって、……
という感じです。時系列も登場人物もめちゃくちゃに、延々続くのです。ちなみにこのおしゃべりに出てくる農場と公園は、まったく別の場所です。
いったんしゃべりだすと、制止するまで止まらない特徴もありました。
ケンケン、ボール投げなど、すべての運動が下手
娘は、とても運動が苦手でした。
ボールを投げても1メートルほどしか飛ばせず、ジャングルジムは怖がって登れませんでした。なわとびは1度も飛べなかったし、走り方もどこか変でした。
しゃがんで遊ぶこともできませんでした。砂場ではべったり座りこんで、いつも服が汚れていました。体育すわりをすることも難しく、すぐに床に寝ていました。
不器用
以前から指摘されていた「不器用さ」は、年中クラス後半になっても、あまり改善されていませんでした。
保育園の工作では、はさみで形を切り取ることも、ちぎった紙を貼るためにのりを薄く塗ることも、上手にはできませんでした。
着替えやハミガキなどの身辺自立は、不器用なりに、親や先生と練習して、ようやく自力でできるようになってきました。ですが、うしろまえだったり下着がはみ出していたり、完成形とはほど遠いかたちでした。
ひどい爪かみ
爪かみのクセが、ちょうどこの時期から始まりました。
なにかというと噛んでいて、そのせいだろうと思いますが、しょっちゅう感染性胃腸炎をもらってきていました。これには本当に参りました。
爪をかんでしまう理由は、
・ただ、その感覚が心地よくてかんでいる
などではないか、と考えていましたが、はっきりとはわかりませんでした。保育園の先生は、

無理やりやめさせると、べつの常同行動になるかもしれない。様子を見ましょう。
とおっしゃっていました。
自分だけの世界に、入っている感じ
娘はいつも、世界をうっとりと眺めているように見えました。
うまく言えませんが、親から見ると、娘が大きな虹色のシャボン玉の中にいて、その中から虹色に揺れる世界を見ている、ように見える感覚でした。その中には、こまかい景色も音も親も先生も、入れないような感じでした。
一斉指示は、相変わらず聞こえていない
一斉指示も、年少クラスのときと変わらず聞いていない様子でした。先生のお話の時には、どこか遠くを眺めているか、地面をいじっているか、爪をかんでいるか、でした。
加配の先生を配置してもらう
娘はいまだ、保育園の日々の流れを、みんなと同じペースでこなすことが難しい状態でした。それをサポートするために、保育園で申請を出してもらい、加配の先生を配置していただけました。
28人だった年中クラスには、娘のほかに療育に通っている子があと2人いました。そこで、娘も合わせて3人の子のために1人の加配の先生をつけてもらう、というかたちで配置してもらいました。
ごっこ遊びはしない、指差しもまだしない
お友達がおままごとやヒーローもののごっこ遊びに興じている中、娘はそういったごっこ遊びには無関心でした。
すべり台やブランコ、砂遊びなど、自分の世界の中で遊んでいました。たまにままごとに混ぜてもらっても、いつのまにか離れていました。
このころになっても指差しはまだせず、こちらの指した先をながめることもしませんでした。
保育園のことを、話してくれない
娘は、家に帰っても、その日の様子を話してくれませんでした。

楽しかった。
とは言うのですが、

なにして遊んだの?
と聞いても、

うーん、わかんない。
という答えでした。
セカンドオピニオンでの、発達外来診察の様子
初めての、かかりつけ小児科の「発達外来」は、10畳くらいの日当たりのいい部屋で、部屋の一角が畳敷きになっていて、おもちゃも並んでいました。
お友達のお母さんに紹介してもらった、担当の言語聴覚士のG先生は、まだとてもお若くて、優しいお姉さんのような先生でした。
さっそく問診が始まりました。内容は、
- 娘の成育歴のていねいな問診
- 遊んでいる娘の観察
でした。
「寝返り」だけが遅かったことに着目される
成育歴の問診では、不育症で低出生体重で生まれたこと、1才までは未熟児フォローアップのため小児科外来にかよっていたこと、未満児クラスから保育園にかよっていること、などなど、こまかくお話ししました。
先生は、まず、娘が「寝返り」だけが遅かったことに着目されていました。そしてその場で、娘と遊びながら、

寝返り、コロコロしてごらん。
と娘に促しました。
娘はやっとのことで1回身体を転がしましたが、そこでハーハーと息が上がってしまって、もう終わりでした。
赤ちゃんのころ、なぜか「寝返り」だけができなかった娘。けれど私は、いままでそれについて、深く考えたことはありませんでした。
協調運動障害の可能性も
「協調運動」というのは、手足を同時にそれぞれ動かす、とか、なにかを見ながら作業する、というような、体の各部分の個別の動きを、同時に行う運動です。
私たちは、日常生活のなかで、あたりまえのようにこの協調運動を使っています。器用さは、協調運動がうまくできているかで決まります。
先生は、自分は作業療法士ではなく、検査をしていないので何とも言えないけれど、協調運動障害の可能性もある、と教えてくださいました。
発達の順番が「違う」ということ
先生は、

心身の発達には、順番があります。
順番が大きく違うということは、発達のアンバランスに大きな影響を与えているかもしれませんね。
とも、おっしゃっていました。先生の説明では、
粗大運動→腕を動かす、走るなどの大きな動き
微細運動→字を書く、はさみで切るなどの細かい動き
例;首すわり→寝返り→ハイハイ→おすわり…
ということでした。
「寝返り」の順序がおかしかったことが、娘の不器用さにつながっているのかもしれない、と、先生は娘を見ながらおっしゃいました。
協調運動に関する発達の順番については、こちらの作業療法士の方のブログが、とても参考になります。

「お母さんが、自分を責める必要はありません」
私は、

自分の体質のせいで、娘が小さく生まれ、こんなに苦労させているんです…。
という重荷も、G先生にうちあけました。先生は本当に、お話を聞くのが上手な方で、こちらがなんでも話したくなってしまう雰囲気を持った方でした。
先生は、

小さく生まれたことが、関係がゼロではないかもしれないけど、直接の主たる原因ではないと思いますよ。
実際、低出生体重と発達の偏りや遅れの因果関係は、学術的に見てもはっきりとは分かっていません。
こども病院で同じように早産で生まれたお友達みんなが、発達で困っているわけではないでしょう?
お母さんは、よく頑張って娘ちゃんを育ててきたと思いますよ。
自分を責めることはありません。
と、優しくおっしゃいました。
私は、

そうはいっても、小さく産んだし…。
と心の中で思っていましたが、それとは裏腹に、涙が勝手にあふれてきました。娘の発達について、こんなに親身になってもらったのは、これが初めてでした。
「この子が、困っていることは何ですか?」
先生が問診で一番細かくお聞きになったのが、

娘ちゃんが、何に困っているか?
ということでした。
OT(作業療法)やST(言語療法)などの療育は、「まわりの大人ではなく、本人」が何に困っているかに焦点を当て、それが改善するように進めることが一番大事だ、というのが、先生のお話でした。
私は、保育園で不器用すぎて困っていること、先生のお話がよく聞けないこと、などを細かく伝えました。
発達外来セカンドオピニオンの結果
ていねいな問診の後、娘の発達の傾向、今後の展望をセカンドオピニオンとしてお聞きしました。
粗大運動のOTが効果がありそう
微細運動の苦手さはもちろんですが、粗大運動のほうにもかなりの苦手さが見られる、と指摘されました。
運動には、「粗大」→「微細」という発達の段階の順序がある
娘の場合、粗大運動の発達がいびつなことで、微細運動の発達にも影響が出ているのではないか。それで、協調運動がうまくいかず、不器用になっているのではないか、と指摘されました。
OTの主な内容を、「微細運動」から「粗大運動」に変更してはどうか
これらをうけて、
を提案されました。
粗大運動を改善していくことで、微細運動の方にも良い影響があるのでは、ということでした。
少し遠い隣の市に、レベルの高い作業療法士が何人もいるリハビリテーション科があるということで、そちらでのOTも紹介していただけました。
一斉指示やコミュニケーションには、やはりグループ療育の継続が有効
一斉指示をきくことやコミュニケーションについては、継続したグループ療育がよい、といわれました。G先生は、療育園の先生のこともよくご存じで、今受けているグループ療育は適切だと思う、と言っていただけました。
就学に向けて、STの検討も
娘は年中クラスでしたが、あと1年半後に迫った小学校入学に向けて、「学習に関する力」をよく見ていった方がいい、と指摘されました。
不器用な部分や、そのほかの偏った部分から、読む・書く・計算する、というようなところでつまずきそうな様子があれば、早目に対処した方がいい、ということでした。
その手段として、STを提案されました。
新たな療育(粗大運動OT、ST)のスタート
セカンドオピニオンは、親身で、ていねいな問診で、私は目の前が明るく開けたような気持ちでした。私と娘は、さっそく、提案された新たな療育をスタートしました。
粗大運動のOTを始めた
粗大運動のOTの内容
紹介してもらった粗大運動のOTは、遊びのかたちで、ダイナミックな動きやバランスをとる動きを練習するものでした。
20畳ほどの広い運動室には、子どものその日の作業内容に合わせて、運動の器具が設置してもらえました。大きなブランコ、輪くぐり、平均台、トランポリン、ボルダリング、なわとび、アスレチックなどがありました。使わないときは隣の倉庫にしまってあるので、娘が気を散らすこともありませんでした。
1人のこどものために、20畳もの部屋にこんなに贅沢に運動器具が設置されることに、私は心底驚きました。娘はこのOTが本当に楽しかったようで、2週間に1度でしたが、それはそれは喜んでかよっていました。
おたのしみとして、微細運動のOTも
点つなぎ、色塗りなどの机上でのOTも、気分転換として導入されていました。気がちる娘には、メリハリがあり集中しやすい流れでした。
就学を見すえて、ST(言語療法)を始めた
字を認識する練習
娘は、赤ちゃんのころから一貫して、絵本の読み聞かせに興味が薄い子どもでした。
字を読むことが、苦手なのかもしれない…という不安もあり、セカンドオピニオンをしていただいたG先生から、STのかたちで療育を受けることになりました。
文字を認識するには、文字を構成する要素(一とかノとか)の分解をする力が必要、ということで、△や□などの簡単な形を、要素に分解する練習から始めました。
形をうつしとる練習
板書をノートに移す力も必要になる、ということで、見たものをうつしとる力があるかどうかも、観察していただきました。娘は、これはかなり苦手で、本人もすぐに嫌になってしまうので、少しずつ続けました。
グループ療育は、継続して受けた
セカンドオピニオン前から受けていたグループ療育は、継続して受けました。娘も楽しんでかよい、私自身も、子どもの発達について親同士で話ができる、貴重な場所でもありました。
新たに始めた療育の成果
新たな療育は、娘に合っていたようで、少しずつ成果が見え始めました。
粗大運動だけでなく、微細運動も改善
はさみの使い方やハミガキのやり方がなめらかに
粗大運動のOTに通い始めて、家でもできることを教わり、トランポリンを用意して毎日遊んだり体操をしたりしていました。
すると、はじめて3か月ほどで、娘の体の動かし方が目をみはるように変化しました。着替えのとき、ハミガキのとき、工作のとき。さまざまな場面で、動きがなめらかになったのです。
もちろん、他の子と同じように、などというわけではありませんが、以前の娘に比べると、その差は歴然でした。
まっすぐ歩けるように
身体の使い方の感覚がめざめてきたのか、登園のとき、手をつないでいなくても、道をまっすぐ歩くことができるようになりました。
これまで、ふらふらと歩いていて、手をつないでいないと車にぶつかりそうだった娘が、しっかりと前を見て歩けるようになったのです。
字の認識が、少し苦手だと判明した
分解する力と、うつしとる力が弱い
就学に向けて始めたSTで、文字の認識も少し苦手だと判明しました。原因としては、
・やはり不器用な面
・視覚的な認識の問題
などが考えられましたが、まだ幼いので断定はしにくい、ということでした。
就学前に分かったから、準備と練習ができる
でも、就学までまだあと1年以上ありました。ここで分かってよかった、と私は希望を持ちました。これから練習していくことで、苦手な原因もわかり、対処方法も考えられると思いました。
一斉指示が、少し聞けるようになった
粗大運動の改善も、関係あるかも
グループ療育の成果も見え始め、以前よりも先生の一斉指示を聞いていられるようになりました。粗大運動のOTの成果で、座っていられる力が発達したことも、関係があるかもしれません。
集中するためには、脳だけでなく身体も必要だったようでした。
興味関心が増えた
身体がしっかりしてきたことで集中しやすくなったのか、クラスのみんなと一緒に、花や虫、動物などを、今まで以上に興味を持つようになりました。
これまでは、興味のありそうなことがあっても、取り組むこと自体がくたびれている様子でした。しかしこのころになると、おともだちと一緒に何かを見つめる目に、しっかりした光が宿ったように、親としては感じました。
親も、きもちが楽になった
親身に、寄り添ってくれる先生だった
主治医はさておき(ちょっと怖い、私より少し年上の女性の先生なのです)、言語聴覚士のG先生は本当に暖かく優しい方で、私は困ったことがあると、次の診察のときに忘れないようにメモを取っておき、相談していました。
G先生はそのたびに、親身に相談にのってくださり、とても心強い気持ちでした。
効果が出るのは、「本人に合った」療育だった!
療育がこんなにも成果があるものなのか、と、ようやく実感ができるようになりました。娘の就学に向けても、少しずつ前進している気持ちでした。
しかし、就学に向けては、「特別支援学級か通常学級か」の選択という、もうひとつの重要な決断をする場面が待っていました。
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